以前の記事
2010年 08月 2010年 06月 2010年 05月 2010年 03月 2010年 02月 2010年 01月 2009年 12月 2009年 11月 2009年 10月 2009年 09月 2009年 08月 2009年 07月 2009年 06月 2009年 05月 2009年 04月 2009年 03月 2009年 02月 2009年 01月 2008年 12月 2008年 11月 2008年 10月 2008年 09月 2008年 08月 2008年 07月 2008年 06月 2008年 05月 2008年 04月 2008年 03月 2008年 02月 2008年 01月 2007年 12月 2007年 11月 2007年 10月 2007年 09月 2007年 08月 2007年 07月 2007年 06月 2007年 05月 2007年 04月 2007年 03月 2007年 02月 2007年 01月 2006年 12月 2006年 11月 2006年 10月 フォロー中のブログ
西南西ドイツ日誌 (旧) めがね職人の店プリーマ 子連れ犬連れドイツ日記 ドイツ 中学生日記 入れ歯とインプラントの日記 Keep Challen... 通訳Mのお仕事日記 今を生きる コロンバスに... 千葉らしき哉、人生! 国際協力NGO事務局の「... my territory なすびの花は無だばかり ドイツカンマームジーク カテゴリ
検索
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
2009年 03月 31日
そもそも記憶力には自信がないのに、近頃は読んだはしから題名と著者名を忘れ、聴いたはしから曲名と演奏者名が抜けていく。あんまりヒドいから、せめて本だけでも1ヶ月ごとに振り返り、ボケ防止に努めようと思い立つ。
まずは、カズオ・イシグロ『わたしを離さないで』。昔、大江のSFもどき本を読んで、「新ジャンルに敢えて挑戦するぞ俺は」的な鼻息の荒さに、こちらが気恥ずかしくなるようだったけど、ややそれに近い読後感。ツメの甘い近未来的設定と、彼の魅力のはずの静謐な文体が、なんだかチグハグに思えて。『日の名残り』のように、波風立たせず事件も起きないまま、抑えて抑えて最後まで淡々と書き綴る方が良かったな。 イマイチ感(?)を埋めるように手に取ったミラン・クンデラ『存在の堪えられない軽さ』は、とんでもなくミゾオチに重い。感想は書ききれないが、加藤周一も講演で紹介していた、プラハにソ連の戦車が侵攻した際のエピソードについては考え込んだ。プラハ市民が、一夜にして全ての道路標識を「モスクワ行」と書き換えてしまったことを、戦車によっても破壊されない文学的想像力による市民の抵抗と加藤周一は言っていた。西側ヨーロッパ諸国でも、暗いニュースのただ中にあって不屈のユーモアとして好まれたこの話の、全く別の側面をクンデラは描く。本来のチェコ語での地名の標識が塗り替えられ、確かにソ連軍は最初おおいに戸惑った。けれど彼らは名前をなくしてしまった場所に、「モスクワ広場」「スターリングラード通り」と次々新しいロシアの名をつけてしまったのだ。抵抗の熱狂の最中には予想もつかなかった歴史の皮肉な帰結を振り返り、「危険な作戦だった」というクンデラの言葉は、これまた重い。 クンデラが消化しきれず、誰かに意見を聞きたくて、池澤夏樹のクンデラに関する短文が含まれる『読書癖2』をちょろっと読むが、自分の思い入れの強い作品ほど他人の解釈にどこか納得できないのは、まあ仕方ないのかな。 買ったまま放ってあったのを思い出し、ポール・オースター『ムーン・パレス』を読む。荒唐無稽ながら細部まで練れていて、おとぎ話的に楽しめた。でも小説が続いて頭がヘンになりそうだったので、菊田幸一『日本の刑務所』を間に挟んでみたりする。 そうこうするうち注文してた大好きなイタロ・カルヴィーノの『不在の騎士』が届いて、またもや小説に。鎧の中は空っぽの「不在の騎士」がいかにして存在するか。それは強靭な意志の力による・・・って設定からして笑えるけど、物語もあり得ない怒濤の偶然がやみくもに続き、強引なラストまで突っ走る。うーん、イタロいいなー。 その最終場面の中では余談的なエピソードだけど、一人の若い騎士がかつて救った村を鼻高々と訪れたとき、大歓迎を受けると思いきや・・・というくだりは痛快。映画『七人の侍』のラストも思い出させるが、百姓達からの無言の拒絶を受け、立ち去る侍の哀切との対比で描かれる百姓のしたたかさが印象的なこの映画に対して、本作での「同じ市民として対等に暮らそう」という農民からの提案は、もちろん騎士にとっては堪え難く屈辱的だけど、どこか牧歌的で大らかな響きがある。 再び小説を離れ、今度は松下竜一『怒りていう、逃亡には非ずー日本赤軍コマンド 泉水博の流転ー』。日本赤軍によるダッカ日航機ハイジャック事件で、日本赤軍とは全く関係のない強盗殺人犯だったのに釈放要求リストで指名され、超法規処置により出獄しアラブに渡った泉水博の半生が描かれる。この圧倒的なノンフィクションは、今月のイチオシかも。これまた余談的な話だけど、ウニタ書房の店主と重信房子の対面シーンがなかなか印象深かった。 そして最後は、F見くんオススメの漫画、花輪和一『刑務所の中』。日々の食事の偏執的な描写とか、なんていうかスゴイ。それにしても『日本の刑務所』『怒りていう・・・』ときて、シメがこれだと、今月は刑務所月間? 飽きっぽい私が来月以降もこの読書記録を続けられるでしょうか。頑張ります。
by jukali_k2
| 2009-03-31 23:21
| 本
|
ファン申請 |
||