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2007年 08月 07日
昨年3月、横須賀からの米空母艦載機に、住民投票で「NO」の意思表示をした岩国市。あーそんなこともあったねーくらいのボンヤリした記憶しかない私のような人たちに、井原勝介岩国市長は語りかける。
「今、岩国で起きていることを、1人でも多くの人に知って頂きたい。」 彼の一言一言の背後には、伝えたい中身がぎっしりと重く詰まっている。 三鷹市共働センターで、「上映会&岩国市長のお話」というのがあり、参加した。市長の話に先立って上映されたドキュメンタリーフィルム『消えた鎮守の森』は、まるで大掛かりなサギ事件のような成り行きを伝えるものだった。基地の町、岩国に、沖合に滑走路を出して恒常的な騒音を軽減しようという話が持ち上がる。そのため山一つを開発公社がそっくり買い上げ、ごそっと削り取った土砂で海を埋め立てる。平らになった土地には、病院や福祉施設、学校を併設する、バラ色のニュータウンが建設されるという。ところが地元住民の期待をあっさり裏切り、開発計画は頓挫。宙に浮いた土地の、米軍用住宅への転用が計画されていたことを住民たちが知ったのは、メディアの報道からだった。しかも沖合基地は騒音軽減のためだったはずなのに、米軍再編にともない、岩国基地を現状の倍の規模にするための下準備だったらしいことが分かってくる。 住民投票のツケは、米軍住宅地転用の出来レースに踊らされただけで済まなかったというのが、その後の市長の話。こんな突然の無茶な要求を、納得できる説明もなしに到底受け入れることはできない、との岩国市の当然の反応に対し、我が日本国のしたことは、まったく卑劣なイジメである。米軍再編以前から約束していた市庁舎立て替えのための35億円の補助金を、突然カットしてしまったのだ。工事はもう始まっているというのに。 県や防衛庁を相手に、粘り強く交渉を続ける井原市長には、熱情に突き動かされる運動家のイメージはない。慎重な計算と駆け引きとを積み重ねながら、思いきった判断を実行に移す、良い意味での「政治家」の印象を持った。それでも、言葉を選びながら、むしろ淡々と語る井原市長が、話の終盤に差し掛かり、一度だけはっきりと強い意志と信念とを感じさせる口調になった。これ以上の負担はゴメンだと意思表示したものの、米軍はきっと来る。どうせ来るなら、早いとこ折れて、お金でもなんでももらった方が得だ、という空気が流れ始めている、と語ったときのこと。 「来るものは来る。本当にそうでしょうか。いや、そうではない。市民にあきらめさせるような市政を、私はするわけにはいかないのです。」 井原市長の言葉は、たぶん薄っぺらな口約束とは違う。少なくとも彼は、政治家の発する言葉の重みを知っている。私にはそう見えた。失言を繰り返す政治家ばかりを目にして、どうせ政治家の言うことなんて、と漠然と考えていた。そのあきらめこそがまた、政治家が言葉を軽んじる風潮を許すんじゃないか。原爆は仕方なかったなどと言いだす政治家を、世に出してはいけないと、あらためて思う今日、原爆の日。 参考: 井原勝介岩国市長のホームページ 参考2:これを書いてから、JANJANで、この日のイベントが取り上げられていることに気がつきました。写真もあります。
by jukali_k2
| 2007-08-07 00:44
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